伊坂幸太郎さんの初期短編集「チルドレン」を紹介します。
本作品は2006年にWOWOWでテレビドラマ化、同年に映画化されています。
作者や出版社は?
伊坂さんは本屋大賞、山本周五郎賞、柴田錬三郎賞など数々の賞を受賞されている大人気作家です。
多くの作品がメディア化されています。
一冊で完結の作品が多いためか、映画が多いですね。
本書は「小説現代」に掲載されたものが一冊にまとまったものです。
こんな人におすすめ!
魅力的な登場人物が出てくる小説が読みたい
さくっと読める短編集を探している
登場人物のテンポが良くてコミカルな会話が楽しいです♪
読んだきっかけ
伊坂幸太郎さんの「アヒルと鴨のコインロッカー」を読んですっかり伊坂さんのファンになりました。
他の作品も読もう!と思い立ち、気軽に読めそうなこちらの短編集を選びました。
カバーの表紙絵がかわいくてお気に入りです。
初めて伊坂さんの小説を読んだ時はデビュー後数年経った頃で新進気鋭の若手作家という印象でしたが(すでに人気作家でした)、今は目を見張る大活躍ぶりですね。
長年書き続けられている伊坂さんを尊敬します!
本の内容は?どんな話?
・大胆で破天荒な陣内というキャラクター、そして陣内を取り巻く友人や同僚の話
・とりとめのない日常のはずがいつのまにか非日常に変わっている、そんな瞬間が切り取られています
・短編小説5本から構成されています
伊坂さんが書かれている、日常に潜むちょっとした違和感の正体が気になって仕方なかったです。
ちょっとしたことなのに絶対におかしい、なぜだろう?
一体なぜ?と謎解きをしている気分になりました!
続きが気になってページをめくる手がとまりませんでした。
それぞれの作品について触れていきますね!
バンク
人質にされるというとんでもなく怖い状況なはずなのに、コミカルに書かれているので緊張感なく読めます。
怖いもの知らずな陣内のキャラクターによるところが大きいと思います。
彼には「えっ、状況わかってる…?」と突っ込みたくなります。
小説だから楽しく読めますが、実際に周りにいたら冷や冷やしぱなっしでしょうね笑。
友人の永瀬との出会いの話でもあります。
目の見えない永瀬はとても賢い人物で、彼の推理は読み応えがあります。
チルドレン
少年と父親の関係、この謎が気になってわくわくしながら読みました。
オチは全く予想できない、びっくりな内容でした。
さすがはミステリー作家の伊坂さんです。
レトリーバー
陣内の妄想というか思いつきで話していることが、いつのまにか大きなことへ発展していくという展開が面白いです。
伊坂さんはいつもこちらの期待通り(いや、期待を裏切って?)予想できない展開を書かれるので「次はどうなるんだろう?」とずっと楽しい気分で読んでいます。
チルドレンⅡ
オチがきれいで、「この後きっとこうなったんだろうな」と読者に前向きな未来を想像させる終わり方でした。
この作品では登場人物の関係を推理した人が多いと思います。
私も自分なりに考えましたがハズレでした。
まだまだ読み手としての技量が足りていないですね笑。
「読む力」を鍛えたいです…!
イン
バンクに引き続き、永瀬の頭の良さが発揮されているエピソードがあります。
陣内の過去の伏線も回収されていました。
陣内のバイトは何だろう?とわくわく心とミステリー心の両方が楽しめます。
短編なのにこんなに盛りだくさんな内容だなんて…素晴らしいです。
おすすめポイント
お気に入りの箇所を引用して紹介します。
陣内のかっこいいセリフ
「俺たちは奇跡をやってみせるってわけだ。ところで、あんたたちの仕事では、奇跡は起こせるのか?」
チルドレン 伊坂 幸太郎
上記は「チルドレンⅡ」の中での陣内のセリフです。
職場の仲間達と飲みに行った時に、隣の座席の中年男性に絡まれた場面でのセリフです。
ここでの奇跡とは、非行少年を更生させることを指しています。
奇跡と言えるぐらい、非行少年を更生させることは難しいということを意味しています。
陣内にそんな熱血な一面があったとは…と驚きました。
彼なら本当に奇跡を起こせそうな気がします。
武藤の独白
世の中の物事には、「正解」と「不正解」が厳然と存在しているかのような口振りで、それがまた僕には気に入らない。
チルドレン 伊坂 幸太郎
これも同じく、「チルドレンⅡ」の中での武藤の独白です。
武藤は家裁調査官の業務で離婚問題を担当することになった。
当事者である夫が「〇〇するのが正解だと思う」と繰り返すので、反発するような気持ちを抱いた武藤の独白。
読んでいる私も、武藤と同様に「正解だ」と話す当事者にイラっとしてしまいました。
「正解だ」と言われると、理屈ではなくて「あなたはどうしたいの?」と質問したくなります。
武藤はそうだったのかはわかりませんが、「気に入らない」とのことで、強く共感しました。
伊坂さんの小説は共感できるところが多くてスルスルと読めます!
感想
まず特筆すべきは、陣内という登場人物についてだと思うんです。
陣内のキャラクター
・大胆で破天荒、怖いもの知らず
・どんな行動をとるのかいつも周りはヒヤヒヤしている
・だけど正直で気持ちの良い人物
本作品を読んでいる人は、きっとみんな陣内が好きなんじゃないかなと思います。
陣内は時々(いや、いつも?)突拍子もない発言をするけれど、現実的に私たちはそんなことできません。
うらやましくなるのかもしれません。
そして、かっこいいと思います。
伊坂さんも陣内というキャラクターがお気に入りだそうです。
いきいきと書かれているのが伝わってくるので納得でした。
そして、読後感がとてもすっきりしてさわやかです。
伊坂さんの作品を読んだことがない方にも手に取りやすい作品だと思います。
ぜひご一読下さい♪
「チルドレン」には続編「サブマリン」があります。
こちらです。